『喫煙率は減っているのに、肺がんが増えているのは、タバコと肺がんが関係ないからだ。』
このような理屈が、アンチ禁煙の立場の方によって、ネットや書籍によく紹介されています。 (男性の場合を例にします。)
下の図1は喫煙率と、肺がん死亡数のグラフです。
確かに、喫煙率は1966年のピーク83.7%から、2011年の33.7%まで、減る一方です。
そして、肺がん死亡数は1958年の2,919人から、2010年の50,395人と増える一方です。
このグラフを見ると先ほどの論理は合っていそうです。でも間違っているのです。
ここからは、よく読んでいただきたいと思います。
がんというものは高齢になると増えます。したがって人口が高齢化するだけでも、がんは増えます。日本は現在急激に高齢化が起きており、それだけでも肺がんは増えていきます。そこで、本当に肺がんが増えているのかを比較するには、年齢構成を補正した肺がん年齢調整死亡率 (人口10万対)というものが使用されます。
肺がんに限らず、がんが増えてきているのか減っているかとの論議をするには、疫学的には年齢調整死亡率で比較しています。
高齢化を考慮するとグラフ2となります。つまり1996年をピークに肺がんは減少に転じているのです。
これは、喫煙率が減った影響が出てきていると考えられるのです。
さらに分かり易く模式化すると図3となり、これは、タバコ病の流行モデルと言われるものです。
喫煙率のピークの30年後に死亡のピークがくると言うものです。
これは、よく考えてみると分かります。タバコを吸ってすぐ "がん" になる訳ではありませんね。
しばらく吸い続けて初めて病気になるのです。そのタイムラグが30年という訳です。
さて、いよいよ佳境に入ってきました。
本質を見るのには、長期的なスパンでものを見る必要があります。
そこで、もっと長いスパンでグラフ化しました。(1920年〜2011年)
喫煙率は、専売公社→JTの調査では、1965年以降しかありませんので、それ以前のものは違う調査からですが参考までに加えました(破線)。さらに、タバコの一人あたり消費本数 (15歳以上1人あたり)のグラフも参考に加えました。 (喫煙率調査は、1949-1964年までは、専売公社が外部委託、時事通信社・中央調査社・電通による調査)
肺がん年齢調整死亡率:厚生労働省人口動態統計
人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2013年)より
http://ganjoho.jp/professional/statistics/statistics.html
喫煙者率:JT 調べ
http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html
一人あたり消費本数:、(社)日本たばこ協会「たばこ統計情報」
どうでしょうか?見えてきましたね。
喫煙率のピークの1966年から30年後、一人あたり消費本数のピークの1977年の約20年後の1996年に肺がんの死亡率がピークとなって減少しています。
つまり、タバコ病の流行モデルは正しく、喫煙と肺がんの関係は日本人全体を実験の対象として証明されたと言って良いのです。
これは、アメリカでも同様で、喫煙率の減少に遅れて、肺がん死亡も減っています。
どうでしたか?
アンチ禁煙のいわゆるタバコ会社の御用学者・医者の言説には騙されてはいけません。教授だろうと間違った事は言われるのです。真実を見る目をもっていただけたらと思います。
(注)
喫煙と肺がんの関係はこのような単純なグラフから割り出されたものではありません。あくまでも間違ったグラフの解釈に対する反論・説明です。
喫煙と肺がんの関係は、疫学という学問で、タバコを吸う人と吸わない人を何十年も追跡調査をして(前向き研究)、その中で肺がんになる人が、喫煙者に何倍も多かったという研究結果がたくさん出たことから、証明されました。
また、本数が増えれば肺がんの発生率も高かったことも用量依存性があるということで証拠の1つとなっています。
また、動物実験での発がん実験の結果や、人において、非喫煙者に比べて喫煙者の方が肺の細胞の遺伝子異常が多い事(がんは遺伝子異常によって起きます)なども証拠となっています。
それら全てを合わせて、科学的、医学的には確固たる事実として認められているのです。
<参考>
男性も減っていますが、女性も減り始めていますね。
2012/11/28 初版
2017/4/26